ここでは普段仕事で何気なく使っている用語なんだけど、日頃は馴染みがなく、よく意味がわかっていないということが多い言葉をわかりやすく解説してみたいと思います。
わかりやすくという側面を重視していきたいと思いますので、学問的な観点などでは厳密な表現ではないかもしれませんが、その点ご了承いただけますと幸いです。
目次
そもそも「与信」ってなに?
そもそも「与信」とは何のことなのでしょうか?
普段聴き慣れない方も多いであろう言葉ですね。
「与信」とは漢字の意味をそのまま読んで、「信用を与える」ことを言います。ちょっと変な日本語ですね。つまりは相手のことを信用するということです。
では、この場合の「信用」とはどういうものを指すのでしょうか。
「信用」とは、例えばあなたが誰かを信用するという場合に使う言葉ですね。
信用できる人には何でも任せられますね。
一般にはそういう使い方をする言葉ですが、「与信」という言い方をするときには、主に「お金を貸すことができるか」ということにおいて信用できるかどうかを考えます。
わかりやすく言うと「いくらお金を貸せるか」ということ
ビジネスの世界での信用と言っても色々とあります。
この人は間違いなく仕事をしてくれるか?品質の高い仕事をしてくれるか?怪しい組織に所属している人間ではないか?などなど、色々と気になるところがあると思います。
これらは全て信用できる人かどうかということにおいては重要なことです。
しかし「与信」という言い方をした場合には最も重要なことは、「貸したお金が返ってくるかどうか」という一点につきます。
ここで読者の方の中には疑問を持つ方がいるかもしれません。
「お金を貸す機会はそんなに頻繁にあるわけではないのでは?」という疑問です。
ところが、お金を貸すという行為をしていなくても、それに相当する行為は世の中にたくさん存在します。そのために、与信ということを聞く機会が多いのです。
それでは、どういう行為がお金を貸すという行為に相当するのかを考えていきましょう。
少し仕組みを知っていれば簡単なことなので、知っておいて損はありません。
一番シンプルな行為ーいくら借金ができるのかということー
あなたが誰かからお金を借りるとき、貸す側の人はあなたにいくらまでお金を貸しても大丈夫かを考えます。あなたがいくらまでなら返済可能なのか、いくらまでなら信用して貸せるのかを色々な情報を考慮して考えます。それが「与信」です。逆の立場になっても同じですね。
信用というのはこれまでの個人や法人の行動実績から考えられます。日頃からちゃんとお金を払う人、たくさん稼ぐことができる人などはわかりやすい例で信用されやすいです。
それらを客観的に証明できるときにそれを確認して信用が得られます。
信用されて借りることができる金額が決まることを「与信が付与される」という言い方をします。
多くのお金を借りることができる人というのは、社会的に信用されているということの裏返しと捉えることもできます。たくさんお金を借りると言うと、一般的にはあまり良いイメージではありませんが、別の側面から見ると違う姿が見えてきますね。こういうところは、知識を深めていくと面白いところです。
ほとんどの企業が日常的に行なっているー掛売り等の信用取引ー
仕事で「与信」という言葉に触れる時には、この例である場合が一番多いと思います。
ここで似ていますが新しい言葉が出てきました。「信用取引」です。
「信用取引」とは、漢字のまま説明すると「信用して取引をすること」です。
「信用して取引をすること」とは、実際にはお金のやり取りをせずに取引をすることです。
株や為替でも信用取引という言葉を使いますね。それも同じ意味です。
企業が商習慣として一般的に行っている「掛売り」という言葉を聞いたことはないでしょうか?簿記などで出てくる売掛金が発生する取引です。売り買いをまとめて掛取引ともいいます。
掛取引は、商品の納品やサービスの提供を行った後で売上代金を回収したり、仕入代金を支払ったりする取引です。
この取引は、もしかしたらお金をもらうことができないかもしれないというリスクを伴うものですが、取引を円滑に行うなどの目的で、現在の商習慣では一般的に行われています。
ここまで考えると、企業が新しい相手と取引を開始する時には慎重に相手のことを調べたくなる理由はわかると思います。
それを行なっているのが、「与信」の審査や調査です。
企業による取引先の与信調査は担当の審査部門がやってくれるという感覚でいませんか?
そういう方が大半だと思いますが、多くの人が意識して取引先を見るようになると非常に強い組織ができるのです。
ビジネスをする上では非常に重要な概念なので、企業の経営者も管理職も現場の担当者もみんな意識しておいてほしいです。
経営者や管理職の方は部下に教育をすることもオススメします。組織のトラブル回避能力が格段に向上します。
営業の仕事をしている方は、顧客を定期的にこの視点で見ることをオススメします。怪しい取引先に営業しなければ不必要なトラブルに巻き込まれることはありません。成績を追いかけるあまり大きな落とし穴にハマることのないようにしたいですね。
また、フリーランスの方も取引先を「与信」の目線で一度は見ておく必要があると思います。せっかくやった仕事のお金がもらえないとなると大変です……。
この感覚が身につくと、さらにいいことがあります。
そもそも与信の目的は確実にお金がもらえる取引先のみを選ぶことで、危ない取引先を避けることにあります。
しかし、逆の視点から考えると「問題がない」と判断される顧客の中で大きく取引をしても大丈夫な相手先も見つかるはずです。ということは、優良顧客を見つけるためにも利用できるということです。
優良顧客に重点的に営業コストをかけて取引を拡大していくという戦略も可能かもしれませんね。
ここまでで重要性が理解出来た方は、次に具体的に相手の何を見て、どうやって判断していくの?という疑問を持つと思います。
それについては、別の記事でまとめたいと思いますので、そちらをご覧ください。
個人で利用する機会が多いークレジットカードの限度額、キャッシングの利用枠ー
最後に誰もが身近に与信の審査をされている事例をご紹介しておきます。
今はキャッシュレス化がどんどん進んでおり、その主要な役割を果たしているのが「クレジットカード」です。
クレジットカードは、物を買う時にその場では支払わず、まとめて後日カード会社に支払うという仕組みになっています。
みなさんが買い物したお店にはカード会社が立替えて払ってくれています。
カード会社がお店にお金を払ってから、使った本人であるみなさんがカード会社にお金を払うまでの間は、カード会社がみなさんにお金を貸しているのと同じ状態です。
その状態が与信を付与されている状態です。
クレジットカードは名義人ごとに利用できる限度額が異なります。
10万円の人もいれば100万円の人もいます。世の中には上限がないというカードも存在するようですが……
この限度額がそれぞれの名義人の信用に比例しているという仕組みになっています。
ここまで説明してきましたので、イメージしやすくなってきましたか?
キャッシングも同じように利用枠が決まっていて、クレジットカードとの違いは物を買わなくても現金を借りることができるというところです。これはお金を借りるという行為とほとんど同じですので、その考え方を参考にすると良いです。
ここまで色々な視点から与信について見てきましたがいかがでしたか?
何を見てどう考えて判断するの?というノウハウについては、別の記事を書きますので楽しみにしていてください。
少しでも疑問に思っていたことが解消し、仕事や生活の役に立ってもらえたら嬉しいです。